クリーニングから戻った衣類に変色、縮み、破れなどが見つかった場合や、預けた品物が見当たらない場合は、それ以上着用したり、自宅で洗い直したりせず、できるだけ早く依頼した店舗へ連絡します。
見た目に異常があるからといって、直ちにクリーニング店の過失と決まるわけではありません。クリーニング工程のほか、衣類の製造、染色、接着加工、経年劣化、着用中の影響なども原因になり得ます。
大切なのは、最初から責任の所在を決めつけることではなく、預ける前と返却後の状態、店舗で行われた処置、衣類の素材や加工を順番に確認することです。
最初に行うこと
そのままの状態で写真を残す
異常に気づいたら、衣類全体と問題部分を撮影します。
問題部分だけを大きく写すと、衣類のどこに生じた異常なのか分かりにくくなるため、次の写真を残しておくと確認しやすくなります。
- 衣類全体の表側と裏側
- 問題部分の位置が分かる写真
- 問題部分を近くから撮影した写真
- 洗濯表示と素材表示
- ブランド名や品番が分かるタグ
- 付属品や装飾部分
- 受取票や宅配クリーニングの注文履歴
色の違いは照明によって見え方が変わります。可能であれば、室内照明だけでなく、直射日光を避けた明るい場所でも確認します。
洗い直したり補修したりしない
自宅で洗う、漂白剤を使う、アイロンをかける、ほつれを縫うなどの処置を加えると、状態が変わって原因を確認しにくくなります。
シミが残っているだけに見えても、実際には染料の変化、摩擦による白化、接着部分の剥離などが起きている場合があります。汚れと損傷では必要な処置が異なるため、先に店舗へ確認してください。
店舗へ伝える内容
店舗には、感想だけでなく、確認できる事実を順番に伝えます。
- 品物を預けた日と受け取った日
- 受付票や注文番号
- 異常に気づいた日時
- どの部分がどのように変化したか
- 受け取った後に着用、洗濯、アイロンなどを行ったか
- 購入時期と、おおよその購入価格
- 購入店や商品名が分かる資料の有無
- 希望する対応
「元に戻してほしい」とだけ伝えるより、まず状態と原因を確認したいのか、再処理が可能か知りたいのか、補償を相談したいのかを分けて伝える方が話を進めやすくなります。依頼時の情報については、クリーニング店に相談するとき、伝えるべきことも参考にしてください。
再処理で改善する場合と、補償の検討が必要な場合
汚れや仕上げの問題は再処理できることがある
シミの残り、プレス不足、軽い臭いなどは、状態によって再処理で改善できる場合があります。
ただし、同じ処置を繰り返せば必ず改善するとは限りません。生地や染色への負担が増える可能性もあるため、再処理の内容とリスクを確認してから預けます。
損傷や変色は洗い直しだけでは戻らない
次のような変化は、単純な再洗浄では戻らないことがあります。
- 染料が失われたことによる色抜け
- 摩擦で生地表面が毛羽立った白化
- 繊維が絡んだ縮みやフェルト化
- 接着剤の劣化による剥離
- プリントや樹脂加工の脱落
- 生地の破れや穴
- 装飾品や付属品の破損・紛失
色補正や形の修整が可能な場合もありますが、完全に新品時の状態へ戻せるとは限りません。修復を行う場合は、どこまで改善を見込めるのか、風合いや色に変化が出る可能性があるのかを確認します。白い跡がある場合は、スレ・脱色・輪ジミの違いも判断材料になります。
事故の原因はどこにあるのか
クリーニング後に異常が表面化しても、原因がすべて洗浄作業にあるとは限りません。
衣類には、外観から判断しにくい劣化や加工が含まれていることがあります。
- 着用や保管によって繊維が弱っていた
- 汗や紫外線で染料が傷んでいた
- 接着剤や樹脂が経年劣化していた
- 製造時の染色や縫製に問題があった
- 洗濯表示では把握できない装飾が使われていた
- 受付、工場、保管、配送の途中で問題が発生した
原因を調べる際は、受付時の検品記録、処理方法、使用した設備、乾燥や仕上げの条件などを店舗側が確認します。必要に応じて、業界団体や検査機関による事故品鑑定が検討されることもあります。
クリーニング事故賠償基準とは
クリーニング業界には、トラブル解決の目安となる「クリーニング事故賠償基準」があります。
これは法律そのものではなく、全国クリーニング生活衛生同業組合連合会などが設けている業界の基準です。LDマークやSマークを掲示する店舗などでは、この基準に沿って対応することがあります。ただし、すべての店舗や宅配サービスに同じ条件で適用されるとは限らないため、各事業者の利用規約も確認が必要です。
賠償額は、購入時の代金がそのまま全額支払われるとは限りません。一般には、事故発生時点で同等品を入手するための価格と、購入からの経過期間などをもとに算定されます。
基準上は、利用者が品物を受け取ってから六か月、または事業者が品物を預かってから一年を経過すると、基準による賠償の対象外となる場合があります。期間内であっても、時間がたつほど原因確認は難しくなるため、受け取ったら早めに点検することが重要です。
紛失や取り違えが起きた場合
品物が返却されない、別の人の衣類が届いた、付属品だけ不足している場合は、受付票や注文履歴と照合します。
スーツの上下、フード、ベルト、ライナーなどは、別々に管理されていることがあります。すぐに紛失と断定せず、店舗や工場、配送中の保管状況を確認してもらいます。
他人の衣類が届いた場合は、着用や洗濯をせず、店舗の案内に従って返却します。伝票やタグに個人情報が記載されている場合もあるため、写真をSNSなどへ掲載しないよう注意してください。
宅配クリーニングでは利用規約も確認する
宅配クリーニングは、受付店舗、洗浄を行う工場、配送業者が別になっていることがあります。厚生労働省も、非対面型サービスでは原因確認が一層難しくなるため、苦情対応や事故賠償などの取扱いを事前に確認するよう案内しています。
申込み前に、次の点を確認します。
- クリーニングについて責任を持つ事業者
- 苦情や事故の連絡先
- 事故賠償基準の採用有無
- 補償対象外となる条件
- 配送中の事故への対応
- 品物の状態を記録する仕組み
- 受取後の申出期限
非対面サービスでは、預ける時と返却時の相互確認が難しくなります。発送前に衣類全体、シミや傷、付属品を撮影しておくと、後から状態を確認しやすくなります。
店舗との話し合いで解決しない場合
説明を求めても回答が得られない、原因や補償について話がまとまらない場合は、地域の消費生活センターへ相談できます。
全国共通の消費者ホットライン「188」に電話すると、最寄りの相談窓口につながります。相談時には、受付票、利用規約、店舗とのやり取り、写真、購入時期や価格が分かる資料を用意しておきます。
消費生活センターは個別の賠償額を強制的に決定する機関ではありませんが、事情の整理や事業者との話し合いについて助言を受けられます。
預ける前と受け取る時の確認が重要
クリーニング事故は、処理後の衣類だけを見ても原因を特定できないことがあります。
預ける前にシミ、傷、変色、付属品を店舗と確認し、受け取った後は袋に入れたまま長期間保管せず、できるだけ早く状態を点検してください。保管前の手順は、クリーニング後のビニールカバーは外す?でも解説しています。
問題が見つかった場合は、自己処理によって状態を変えず、写真と受付資料を残して店舗へ相談することが、解決に向けた最初の手順になります。
企画・編集:大辞典編集部
