染み抜き料金は高いのか?

着物や洋服の染み抜きやお手入れをしています。屋号は「なをし屋」です。

染み抜きは、ある程度の金額の目安というのはありまして、サイトにもその旨は明示してあるのですが、シミの状態や原因、お品物の素材(絹なのか?綿なのか?化繊なのか?など)と色合いなどによっても作業の可否や難易度が変わってきますので、全部をひっくるめて「この金額」というのは難しい部分があります。

ですので、シミが多数あったりテストが必要なシミの状態などのお品物は実際に拝見させていただいてのお見積もりとなるのがほとんどなんですが、染み抜きのお見積もりをお伝えした際に、「そんなに安いの?」という反応をされる方もいれば、「ふむふむ」と想定範囲内という感じの反応をされる方もいれば、時々「そんなに高いの⁈」という反応をされる方もいらっしゃいます。

ボクの染み抜きという仕事だけでなく、基本的に見積もりというのはまだ依頼する前の検討している段階なので、見積もりを聞いて依頼をするのも断るのも、それはお客様の自由です。

ただ、こちらとしては見積もりには自分の技術への自信と根拠があって妥当だと考える金額を提示しておりますので「高い!」、つまりは、お前にはその金額を要求する価値がない、悪く言えばボッタクリだ!というような反応をされると、ちょっと傷付きますし、正直ムカッとします(笑)

とは言え、想定外という反応をされる方がいらっしゃるということは、染み抜きという手間賃仕事の相場をちゃんと情報発信でお伝え出来ていないこちら側の責任もあるんだと思います。

という事で、染み抜きという作業が、果たしてお見積もりの金額をいただくだけの価値があるのか?というお話。

染み抜き料金は、手間と時間と難易度で決まる

このベッタリと付いたシミ、何だと思いますか?

これは、ワンタッチタイプのヘアカラーがこぼれて着物用のコートに付いてしまったシミです。

ヘアカラーのシミは、シミの種類の中でも、最上級クラスの落ちにくいシミなんです。

街のクリーニング屋さんとかで、「ヘアカラーのシミは落ちません」と言われたことのある方もいらっしゃるのではないですか?

これは、別にクリーニング屋さんの技術力云々という話ではなく、非常に高度な技術力と経験がないと、落とせないシミということなんですね。

ボクも、全てのヘアカラーのシミは落とせません。

ヘアカラーの付いた衣類の素材や染色などの要素により、全く落とせなかったことも何度もあります。

そして、難易度の高いシミというのは、それだけ手間と時間がかかるということですから、染み抜きの専門でないクリーニング屋さんに、本来の業務であるクリーニング以外で時間のかかる作業を強いるのは、ちょっと酷な気もします。

そんなヘアカラーのシミですが、コツコツと時間をかけて染み抜きすると、上の画像のような状態になります。

ヘアカラーのシミを抜くには染み抜き薬品を使って何度もシミを抜く必要があるので、衣類の地色も抜けてしまうことが多いんです。

そうなると、このままでは脱色した部分が目立ちますので、染料でシミがなかった時の状態に戻す必要があります。

その辺りの作業はやはり我々のような染み抜きを専門とする者に一日の長がありますので、クリーニング屋さんがこういうシミを断ってしまうのも致し方ないと思います。

高度な技術である色修正を施すことによって、シミがなかったような状態に戻すことが出来ました。

このヘアカラーのシミの染み抜きの代金は、その他の小さい同じようなシミ数カ所の染み抜きも含めて1万5千円ほどです。

時間にすると、3時間くらいかかってます。

1時間あたり、5千円ぐらいの計算になりますね。

これって、高いですか?

皆さん、散髪とかパーマとかで理髪店か美容室に行かれますよね?

今は千円カットとかもあるので、安く済ませている方もいらっしゃるでしょうけど、一回髪を切りに行ったら、だいたい1時間ぐらい色々してもらって、だいたい5千円ぐらいじゃないですか?パーマとかヘアカラーをしたら、もっと高くないですか?

もちろん、業種もやってることも違うので同じ理屈とは言えませんが、料金の相場感としては、ボクは自分の出す染み抜きの見積もりは高くない、むしろ磨いた技術力を考えると、安いと思っています。

お着物で全体にシミがある場合、時にはお見積もりが10万円ぐらいになることもあります。

でも、そういうお品の場合、最低でも三日間、時には五日間ぐらい作業にかかることもあります。

そして、そういうお品はどんな染み抜き屋さんでも出来るというレベルの修復ではありません。

そう考えると、ボクはやはり自分の出すお見積もりが高いとは思わないんです。

もちろん、先にも申しましたが、お見積もりの段階で依頼をされるのもキャンセルされるのも、それはお客様の権利であり自由です。

ただ、金額だけで判断されて「高い!」と言われると、ちょっぴり傷つくガラスのハートの職人がいるということも、心の片隅に留めておいて欲しいと切に願います(笑)

プロフィール

栗田 裕史
栗田 裕史
1969年京都生まれ京都育ち。染色補正という裏方の業種の職人でありながら、BtoBからBtoCへ挑戦。全て自力でサイトを作り「なをし屋」という屋号で、表舞台へと出る。他店で直せない品物の依頼も多く、一年を超える期間のお預かりもある、変色したり黄ばんだりしたシミも直してしまう染み抜き屋です。「物」ではなくご依頼者様の「想い」を救いたいといつも思っています。【国家認定・一級染色補正技能士】【国家認定・京友禅(仕上げ部門)伝統工芸士】
LINEで送る
Pocket