着物の胴裏の変色、それ、あなたの責任じゃありません!

着物の染み抜き・クリーニング・お手入れ全般を生業にしております。屋号は「なをし屋」です。

着物をお持ちの方で、保管中に裏地(胴裏といいます)が黄ばんだりシミだらけになってしまったという経験をお持ちの方は結構たくさんいらっしゃるのではないかと思います。

例えば、こんな感じに。

 

悲しい状態ですよね。

見た目にも気になりますし、何より問題なのは、このまま放置しておくと着物の表地に黄ばみが移ってしまう危険性があるということです。

そんな胴裏の変色やシミですが、ご相談をいただく多くの方が「これはやっぱり着物の保管状態が悪かったんでしょうか?」とおっしゃいます。

「想い入れのある大切な着物なのに、自分がもっと気を付けていればこんなことには・・・」

中にはそんな風に自分を責めてしまう方もおられるのですが、それは違います。

ハッキリ言います。

 

着物の胴裏の黄ばみやシミ、それ、必ずしもあなたのせいじゃありません!!

犯人は別にいます!!!

着物の裏地(胴裏)の変色には三つの原因がある

まずはここで、着物の胴裏の変色やシミには、大まかに分けて三つの原因と状態があるということをお話させていただきます。

まず一つ目が、全体的にうっすら生成り色に黄ばんでいる状態。

絹は、元々真っ白ではなく、精練(せいれん)という作業を経て、皆さんがご存知の白さになります。

絹の白さは、いわば漂白して強制的に白くしている状態なので、時間の経過と共に、空気中の酸素と結合して、元の黄色みを帯びた色に戻っていこうとします。(酸化黄変)

この状態の場合は、見た目にはあまり良くありませんが、急激に表地に悪影響を与えることはありませんので、そのままにしておいても特に問題はありません。

現在流通している胴裏用の生地は、黄変防止加工を施してあることが多いとのことで、急激に黄ばむことは少ないようです。

二つ目は、斑点のような黄変が所々発生している状態。

明らかにシミのような状態で斑点のように胴裏にシミが発生している場合、元々の原因は、カビである可能性が非常に高いです。

おそらく、カビの発生直後は目に見えない状態だったのですが、時間の経過と共に、カビのシミが変化して生地を黄変させた状態です。

このような場合、カビの菌がまだ潜んでいる可能性もありますし、さらなる時間の経過と共に表地への悪影響も懸念されますので、出来れば、今すぐではなくても、胴裏を新しい物に取り替える方が良いと思います。

三つ目は、全体的に濃い黄色もしくは茶色に変色している状態です。

このような状態がなぜ起こるかと言いますと、ちょっと昔(今でもあるようですが)の胴裏の生地の中には、目方を重くするために、増量剤という一種の糊を含ませているものがあり、そのような生地の場合、その増量剤自体が激しく酸化黄変を起こし、生地自体も変色させてしまうのです。

そして、二つ目のカビによるシミも、この増量剤がカビの栄養源となって発生している場合が非常に多いのです。

しかもこの場合の変色は、かなりの確率で表地に悪影響を与えます。こうなってしまうと、、出来るだけ早く胴裏の交換をオススメします。

変色が裏地で留まっている間は生地の交換で解決するのですが、表地に影響を及ぼした場合、状態によっては元に戻せないこともあります。

しかも、増量剤によって変色している場合、染み抜きなどで濡らすと、黄ばみが表地に移りますし、汗をかかれても、表地に移ります。

ここで疑問が湧いてきます。なぜ、わざわざ絹で織った生地に混ぜ物をしてまで生地の目方を重くするのか?とても不思議じゃありませんか?

それは、絹の生地というのは、同じ生地の長さなら、重い=密度が高い=生糸をたくさん使っている=良い物 という価値観があったんですね(これ自体は間違いではなく、今でもそうみたいです)

そしてこの増量剤による生地の目方を増やす方法、それは、悪徳な業者が己の私腹を肥やすために行った悪事なのです!!!

その昔、悪徳業者は、生地の織元に少ない(細い?)糸でペラッペラの胴裏の生地を作らせ、それを糊の液体の中をくぐらせ、そして糊によって重くなった胴裏の生地を、「これは目方が重いので、良い生地ですよ~」と騙して売って儲けていたんです!!!

ボクがこの業界に入った頃にはもうすでに問題化していたのか、どこがそのような悪どいことをしていたのか?、悪徳業者も実は買い手の要望でそうしていて、騙して儲けたのは実は・・・ということなのか?、その辺りはもう分からなくなっていました。

けれども、それを作ったメーカーは、仮に買い手の要望であったとしても、それが消費者を騙すことだと間違いなく分かっていてやっていたはずです。

そこには、商いやモノ作りの誇りなど欠片もない、下劣な行為と言わざるを得ません。

もう今はほとんど流通していないかと思いますが、もしかすると在庫品などでそのような粗悪な胴裏生地を買わされそうになる可能性がないとは言えませんので、皆さんにも出来る増量剤を含ませた生地かどうか?の簡単な判別方法をお教えしちゃいます!!(我々のようなプロはだいたい一目で判別出来ますが、あくまで目安ですので、判別が出来なくても苦情は受け付けません(笑))

着物の胴裏の生地を買う時は、ここをチェック!

増量剤を含ませた生地とそうでない生地。

重さが変わらないとなると、何で判別すれば良いのか?

手触りはどうか?

ボクも含めてプロの染み抜き屋は毎日多くの着物を触ってますので、100%ではありませんが、手触りで判別することも可能です。

ですが、普通の方にはそれはちょっとハードルが高いかと思われます。

では、何で判別するのか?

それは・・・

増量剤で重さを変えた生地は、そうでない生地に比べて透明感がないんです!!

糊を含ませた影響なんでしょうね。

増量剤を含ませた生地は、絹独特の艶があまり感じられない状態になっています。

もし、今後着物を購入などされてお仕立てもされる場合に胴裏を購入する際は、購入する胴裏を確認されることをオススメいたします。

そして、可能であればいくつか生地を見せてもらって、増量剤が使われていなさそうな生地を選ぶようにしてください。

そうすれば、何十年後かに胴裏の生地が真っ茶色になる悲劇はかなりの確率で防げると思います。

染み抜きやクリーニングなどでお預かりするお着物の中で、胴裏が悲しい状態になっているお品を見る度に、ボクはどこの誰かは分からない悪徳業者への怒りに打ち震えるのです。

追記

ちなみに、胴裏生地の交換は、お仕立て全てを解かなくても、一部分だけ解いて生地を交換して元に戻す事が出来ます。

当店で承らさせていただいた場合、新しい胴裏の生地代も含めて、袷の着物(小紋・付け下げ・訪問着など)で、税抜き25,000円、振袖で税抜き30,000円、比翼付きの留袖で、税抜き35,000ぐらいで承らさせていただいております。

お返しまでの期間は、1ヶ月半〜2ヶ月ぐらいいただいております。

プロフィール

栗田 裕史
栗田 裕史
1969年京都生まれ京都育ち。染色補正という裏方の業種の職人でありながら、BtoBからBtoCへ挑戦。全て自力でサイトを作り「なをし屋」という屋号で、表舞台へと出る。他店で直せない品物の依頼も多く、一年を超える期間のお預かりもある、変色したり黄ばんだりしたシミも直してしまう染み抜き屋です。「物」ではなくご依頼者様の「想い」を救いたいといつも思っています。
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