「職人気質」という病

「職人気質」というか、職人はこうあるべき、みたいなのってありますよね。

それは、世間の方が思い描いたり感じたりするイメージであったり、職人自身が理想や信念としているものであったりします。

そういう「職人らしさ」みたいなものの中には、素晴らしいものもあるんだと思います。今すぐには思い浮かびませんが、たぶん(笑)

ボク自身はそういう職人らしさみたいなことに対して否定的なんですが、その中でも特に悪しき慣習のようなものは、せっかく後継者不足の職人業界に飛び込んでくれた若い職人さんや、これから職人になろうという方には受け継いで欲しくないなぁ~という気持ちで、実際にボク自身がそうしてやって来れた事を具体的な例を挙げてお話をさせていただきたいと思います。

職人はお金のことをとやかく言ってはいけない

「職人はお金のことはとやかく言わずに、黙々と良い仕事をしていればいいんだ。そうすればお金はあとからついてくる。」

みたいな話を聞いたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか?

何故だかさっぱり分からないのですが、どうも「職人にとってお金はタブー」というように考えている方が多いような気がします。

でも、お金は大事ですよね。

お金がなければ、生きていくことが出来ませんし、好きで選んだ職人仕事も続けることが出来ません。

何かを為してその対価をきちんといただくことは、当たり前のことです。

「これだけの仕事をしたのだから、これだけの報酬が欲しい」ということは相手にハッキリと伝えなければなりません。

また、正当な対価を支払ってくれない相手にきちんと話をすることは、何ら恥ずかしいことではありません。経営者なら当たり前のことです。

また、期日になっても支払ってくれないような相手にはどんどん催促していいんです。

こちらは納期やクオリティを守って仕事を完遂しているのに、支払う側がそれらを守らない。そんな事を許してはいけません。なぁなぁで許してしまうと、どんどん自らを苦しめることになります。

職人は愛想や笑顔なんていらない。寡黙で無愛想な方がいい

ボクも職人ですけど、職人さんって、愛想が悪いというかコミュニケーションが成り立たないような人が結構います。もちろん、全くそんなことはない方も多くいらっしゃいますよ。

けれど、職人自身がそういう事を是とする事は、決して褒められる事ではないと思います。

何かの対価にお金をいただく、それに対しての感謝の気持ちを言葉や態度で表す、それはどんな業種であれ当たり前のことなのではないでしょうか?

職人だけがその理から外れるなんて、その考えの方がおかしいと思います。

過剰にへりくだる必要は全くありませんが、お客様に不快感を与えないような態度で対応するのは必要な事どころでなく、それが出来ないなら表舞台に出てきてはいけないのです。

今までに接客業の経験がない方は、アルバイトでも良いので接客業を経験すると非常に役立つと思いますよ。

ボクは職人になる前に一年だけですが百貨店の洋菓子店でケーキを売ってました。そこで接客マナーなどを学ぶことが出来た事は、今にとても役立っています。

職人は、売り込みなんてしてはいけない。良い仕事をすれば仕事はやってくる

これもよく言われていることのようですが、実にナンセンス(死語)

確かに、口コミというのは経営において非常に重要です。

しかし、口コミだけで仕事が安定するにはどうしても時間がかかります。

跡継ぎで先代までの取引先や店舗や設備を受け継いでいるなら良いんです。口コミで仕事が安定するまでの体力がありますから。

でも、跡継ぎでない方の場合、修行を終えて独立した時、取引先などを師匠から分けてもらえれば良いのですが、今の時代は師匠も自分の売り上げで精一杯という場合が多い。

身一つでスタートして、口コミで仕事が安定するまで仕事を続けていく体力が果たしてありますかね?

ゆくゆくは口コミだけでやって行くとしても、そこに至るまでには、営業活動は必要です。

でも、その辺りが苦手な職人さんは本当に多いですね。

そりゃまぁ、当たり前と言えば当たり前ですよね。黙々と作業をする職人をわざわざ選んでるんですから(笑)

それでも、職人を続けていきたいのなら、経営の安定を図るのは非常に重要なことですから、苦手とか言ってる場合ではないので、そこは頑張らないといけません。

ボクも基本的に人見知り激しいので、営業とか苦手です。バンバン飛び込み営業とか出来る人は本当にスゴいな、と尊敬します。

それでも、過去には着物のお店やアパレルのお店などパンフレットとかを持って営業に行きましたし、誰かに紹介してもらった会社に出向きましたよ。だって、そうしなければ全くの新たな仕事なんて獲得出来ませんから。

大丈夫です。せいぜい面倒くさそうにあしらわれる程度で、ちゃんと丁寧に話をすれば、怒られることはまずありません(笑)

どの業種も職人さんの後継者不足は深刻です。もう今からでは間に合わない職種も多くあります。

そんな中であえて職人という仕事を選んでくれる若い方には、苦しい思いや嫌な思いをして職人を諦めるようなことがないようであって欲しいと切に願うのです。

プロフィール

栗田 裕史
栗田 裕史
1969年京都生まれ京都育ち。染色補正という裏方の業種の職人でありながら、BtoBからBtoCへ挑戦。全て自力でサイトを作り「なをし屋」という屋号で、表舞台へと出る。他店で直せない品物の依頼も多く、一年を超える期間のお預かりもある、変色したり黄ばんだりしたシミも直してしまう染み抜き屋です。「物」ではなくご依頼者様の「想い」を救いたいといつも思っています。【国家認定・一級染色補正技能士】【国家認定・京友禅(仕上げ部門)伝統工芸士】
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