私、なをし屋代表の栗田裕史(くりたひろし)は、染色補正業を営む父の、跡継ぎを強制された訳ではありませんが、2代目として生まれました。

染色補正という業種は、今でもそうですが、和装業界の裏方的存在の職人さんがほとんどで、私のように、表に出て商いをする方はまだまだ珍しいのが現状です。

そんな裏方から表舞台に出て【なをし屋】を立ち上げ、ネットや店頭で一般のお客様のお品物をお預かりさせていただき始めて10年ほどになりますが、何故、着物業界の裏方の一職人がそこに至ったか?の経緯を、少しお話したいと思いいます。

父の跡継ぎとして染色補正業に就いた私は、業者さんから持ち込まれる品物をひたすら作業する日々で、失敗を乗り越えて経験と研究を重ね、技術はどんどんレベルアップしていきましたが、何と申しますか、仕事に対するやりがいとか充足感のような物を何となく感じられていませんでした。

そんなある春の日、経営者でもある父が命にかかわる大病を患い、突然、半年間の入院を余儀なくされました。

二人でもこなしきれないぐらいに仕事のご依頼があった状態でしたので、独り店を守らなければならなくなった私は、悲壮な使命感を抱えつつ、半年間ほぼ休み無しで、時には明け方まで必死になって仕事をしていました。

ただ、正直肉体的にも精神的にも辛かったですが、同時に父や店を守るためのやりがいを感じてもいました。

その後、何とか半年振りに父が無事退院して来た時、自分の力で店を守ったという達成感を味わうと同時に、またこのまま以前と同じ日々に戻るのではなく、自分の可能性を求めて挑戦してみたいという強い気持ちが心にあふれてきました。

そして、いつも感じていた物足りなさの原因が何か?と考えた時、今までの仕事は、誰かの為になっている、誰かの役に立っている、という実感がなかったからではないか?と思い至りました。

では、自分の仕事が誰かの為になっていることを実感するにはどうしたらよいか?と考えた時、やはり、困っているお客様と直接やり取りするしかないと結論付けて、今までの業者さんの仕事を承る以外の窓口として、「なをし屋」を立ち上げました。

私が店を立ち上げた時、ずっと裏方として仕事をしてきた私は、集客はおろか、お客様への対応すらおぼつかない有様で、多くの失敗や苦労を重ねました。そして、全く知名度もない私にご依頼いただいた大切なお客様にもご迷惑をおかけいたしました。

そんな私とこのお店「なをし屋」は、優しいお客様に支えられて、2017年7月に創業10周年を迎える事が出来ました。

そしてこれからも、京都のこの小さなお店に着物のお手入れで助けを求めていただけるお客様のために、初心を忘れず精進していきたいと思っております。

世間では、職人というと怖いイメージがあるようですが、私は「コワくない職人」を自称しております。

お着物のクリーニング・染み抜き・お手入れに関することでしたら、どんな些細な事でもどうぞお気軽くださいませ。

あなたの大切なお着物への想いを受け止めて、お役に立てる日を、心待ちにしております。

なをし屋代表・栗田 裕史(くりた ひろし)